神宮道場
「あそこの道場はどんな武道を教えてるんですか?」
観光客からよくそんな質問を受ける。
いかつい門構えと重厚な屋敷からそう思っても仕方ないだろう。
神宮道場はおはらい町にある神職の研修施設だ。
かつてその建物は神宮司庁(神宮の事務を司るところ)だった。
僕らが子供のころは毎日大勢の神宮職員が出入りをし、賑やかだった。
その中には購買部と称する売店などもあって日用品を販売していた。
今で言うコンビニみたいな便利なお店で、食料品をはじめバケツやたばこなど、およそ生活に必要な品はすべて揃っていた。
当時はおおらかで神宮職員でない近所の住民も自由に買い物ができ、僕らも母に言いつけられてよくおつかいに行った。
そして狭い店内にぎっしり並んだありとあらゆる商品を見て回るのが好きだった。
購買部だけでなく敷地内は僕らの格好の遊び場だった。
事務室が並ぶ本館以外にもいくつかの蔵があり、その縁の下は秘密基地をつくるのに最適だったし、中庭にはキャッチボールをする十分なスペースもあった。
その後神宮司庁は内宮神域内に移転し、今は神社庁の研修施設となった訳だ。
夏には神道系の大学の学生が神職の卵になる研修が多い。
中にはピアスをして茶髪にした男子学生もいて、あれでも神主になれるのかと疑ってしまったりする。
そのほか雅楽の研修なんてのもあって、その期間はこの建物から笙(しょう)や篳篥(ひちりき)の音が朝から晩まで聞こえてくる。
神宮道場。
白い塀に囲まれたその一画は、そこだけが時間が止まったような不思議な雰囲気を醸し出している。
K-7 + A18
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by sakura1733
| 2010-02-26 21:38
| おはらい町